自分のことばで自分の音楽を

分の感動を他人(ひと)に伝える…ということは気分よく自己陶酔的に歌い上げることでは

ありません。ポピュラーにしろクラシックにしろ歌っていらっしゃる方が、歌詞の内容をまるで

自分の身に置きかえて歌っているようにみえたり、その歌詞の内容に託して個人的なメッセージ

を伝えようとしているようにみえることがよくあります。

正直、そういう音楽を聞いていると、こちらが恥ずかしくなってしまったり…うんざりしてしまったり

します。

音楽にはもっと普遍性が必要です。


私は、自分のレパートリーにできる限りジャンルのワクを設けず、楽譜や音をとおして感動した曲

をできるだけたくさん歌っていきたいと思っています。

オペラであろうと歌曲であろうと、唱歌であろうと歌謡曲であろうと、まず、すべて同じレベルの作

品としてとらえてゆかなければ、それぞれの曲の本当の深さを知ることができないと思うのです。

言いかえると、クラシック歌手である私のようなものが、唱歌や童謡を幼児語で歌ったり、歌謡曲

を鼻歌的に歌ったりしては、作品の持つ魅力など見つけられるはずがありません。


もちろん作品にはそれぞれ様式とかスタイルとかがあって、それがその都度要求されてくるのは

当然ですが、それ以上に…それをもっと深くさぐるためにも、自分自身の音楽の物差しをいっさい

変えずにアプローチしてゆくことが大事なことに思えます。

先入観にたよらずに自分の視点で音楽を考え、自分のことばで自分の音楽を演奏する。これが

本当の「音楽の喜び」「歌う喜び」に通じていくような気がしてなりません。


【おわり】

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私の考えへもっと微妙なコミュニケーションを