新 審 判 日 記
「3級審判誕生」

企画 田奈SC審判部


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第1回 「今年の7月4日いろいろ」

4年に1回開催されるサッカーのヨーロッパ選手権大会、今年の「EURO-2004ポルトガル大会」は、7月4日の決勝戦で開催国のポルトガルを破って誰も予想していなかったギリシャが優勝して幕を閉じました。なにせ、久しぶりに出場したこのヨーロッパ選手権大会でも、また1回しか出場したことのないW杯(1994年アメリカ大会)でも、まだ1勝もあげたことのなかったギリシャなので大穴中の大穴。2連覇を目指すフランスとか、人気のイングランドとか、フィーゴのポルトガルとかが優勝出来なくてがっかりした日本人ファンも多かったのではないでしょうか。スペインとイタリアが予選ブロックで敗退したり、ギリシャが優勝したりするのですから、ヨーロッパ・サッカーは実力伯仲、すそ野は広いということでしょう。予選ブロックから全てのカードがW杯の決勝トーナメントでお目にかかる対戦でもある訳で、2年前のW杯Korea-Japan大会の試合と比べても、サッカーのレベルとしては、W杯よりも上という印象を強くした今回のヨーロッパ選手権大会でした。

でも、ギリシャに6年半も駐在したことのある筆者にとっては、あの熱狂的なサッカーリーグを知っているだけに、今回の優勝はすごく嬉しいわけです。ギリシャ生まれの我が家の長男、好きなイングランドを逆転で破ったフランスに勝ったギリシャを応援していました。その長男、サッカーを続けていますが、今年はもう高校1年生ですから、筆者がギリシャ駐在に行ったのがもう16-7年前。1987年にギリシャに到着したその日はバスケットボールのヨーロッパ選手権大会の最終日で、ギリシャがロシア(当時はまだソ連ですか) を破って初優勝し日で、アテネ市内は街中で爆竹騒ぎ。今回とまるっきり同じです。20年に1回、何かをやらかしてくれる国なので、何かと楽しい国です、ギリシャは。ちょっと心配なのは、その20年に1回の大騒ぎが今年のこの7月4日に終ってしまったので、来月から始まるアテネ・オリンピックに力が入らなくなってしまうのではないかということでしょうか、なにぶん非常に淡白な国民性なので。

今回の大会の開幕戦で開催国のポルトガルに勝った時の、ドイツ人のレーハーゲル監督が「何が素晴らしいかって、たった一晩で国民を一つにまとめてしまったサッカーの魅力だよ。」と言ったコメントが印象的でした。W杯ではギリシャよりも一足お先に初勝利をあげた日本ですが、今回のギリシャのように国中が一つになって盛り上がるという興奮を味わってみたいものです。2002年W杯の日本大会で日本は初勝利を手にしたのは間違いないのですが、新入社員のようなものでみんながまだ、国と国が戦うサッカーのすごさと楽しみ方を知らなかったというのが正しいところだったのかもしれません。その意味では2006年W杯ドイツ大会は日本も出場3回目になる予定なので、会社の様子がわかってきた2年目か3年目社員くらいの楽しみ方が出来るようにしたいものです。そのためにも、先ずは予選をしっかりと勝ち抜いて欲しいところ。ヨーロッパ選手権大会で今回優勝したギリシャですが、来年行われるW杯ヨーロッパ予選で勝ち抜く保障は何もありません。今回の大会で、ヨーロッパの誰もがギリシャの戦い方を知り尽くしてしまったのですから。そしてそれほどにヨーロッパのサッカーの奥は深いのです。

さて身近なところでは、この7月4日、我が田奈SCの6-5年生チームが地元の青葉区大会で優勝してくれました。春季の区大会は全てトーナメント戦で、今回、初戦がPK戦での勝ち上がりでしたので、どうなるかと思いましたが、強豪ひしめく青葉区での優勝は子供たちの自信になったと思います。同日行われた4-3年生チームの決勝戦では、田奈SCが1点差で惜敗、準優勝でした。前半の2失点を根性で同点まで持ち込んだ迫力はすごかったです。6-5年生チームと合わせて後半の公式戦も頑張って下さい。その前の週に行われた青葉区・緑区・都筑区・港北区の恒例の4区選抜大会で青葉区が連続優勝を飾ったことは、また、違う日に審判日記しましょう。

7月4日の夜は6-5年生チームの優勝祝賀会でした。青葉区長カップでビールを飲むのはこれで何回目でしょうか。「僕の誕生日に優勝してくれてありがとう。」と筆者、スピーチさせて頂きました。アメリカの独立記念日だし、筆者の誕生日だし、ギリシャと田奈SCの優勝が重なって、いろいろあった今年の7月4日でした。今回は、3級審判に昇級してからの初めての審判日記でした。今年は、いろいろな観点から、でもやっぱりサッカー中心に日記していきます。順番が3月とか4月のことに飛んだりするかもしれませんが、また、1年、よろしくお願いします。


第2回 「アジアカップの優勝」

いつもの年より暑い日が続く今年の夏です。「EURO-2004」同様やはり4年に1回の「アジアカップ」ですが、暑い暑い中国で開催された今年の大会は日本が2連覇で優勝を飾りました。決勝の中国戦は余裕の勝利でしたが、何と言っても苦しかったのは決勝トーナメント1回戦のヨルダン戦。延長でも勝負がつかずにPK戦での日本の勝ち上がりでした。テレビで見ていた方も多かったと思いますが、このPK戦の途中で信じられないことが起こりました。先ずはPK戦を行なうゴールですが、メインスタンドから見て左側のゴールが選ばれたようです。どちらのゴールを選ぶかは主審の判断ですが、テレビで見る限り、日本のキャプテンの宮本の「日本人サポーターのいる左側」という主張が通ったようです。NHKのアナウンサーは事前に決まっていると言っていましたが。いずれにしてもその後の展開を考えると、大変な選択をしてしまったようです。

日本の1番目・中村俊介と2番目・三都主の両レフティーの立ち足の芝生がめくれて二人とも蹴る瞬間に滑ったため、キックされたボールがゴールバーのはるか上を超えてしまいました。キャプテンの宮本、コンディション不良を理由にゴールを替えて2人目からのやり直しを要求したようです。マレーシア人の主審、やり直しは認めなかったもののここでなんとヨルダン・チームの2人目が蹴る前にPKを逆サイドのゴールで行なうことを宣言したのです。ルール上には規定されていない主審の判断です。規定されていないのであれば主審の判断でいいのでは、という考えもあるかもしれませんが、公平性の観点からは有り得ない判断です。仮に3人目からのヨルダン・チームのキッカーが全員左利きだったら、結果によっては両チームのどちらからかクレームが出る可能性がある訳です。

そのヨルダン・チーム、2人目のキッカーがやはりレフティだったせいか、それよりもまあ、最初の日本チームの二人が外したのでもう勝ちを確信したのでしょうか、ヨルダン側からは何のクレームも出なかったようです。このヨルダンの2人目も決めて日本側は圧倒的に不利となってしまいました。3人目は両チームとも決めて、先攻日本の4人目も何とか決めた段階で2対3。ヨルダンの4人目か5人目のどちらか一人が決めればヨルダンの勝ちという崖っぷちに立たされてから、川口のファインセーブがあってヨルダンは連続4選手が外してしまい、日本がサドンデスに持ち込み逆転でPK戦に勝利しました。

この試合の主審、ゲーム中から判定がおかしいのではと感じていました。開始早々のFW鈴木が受けたバック・チャージは完全にイエローカード、足の裏でチャージにいったヨルダン選手はレッドカードでもおかしくなかったはず。ファウルのホイッスルを吹いてからニヤニヤ笑う表情も審判としては失格。選手にしてみれば真剣にやってんのかと文句が出そうです。問題のPK戦の際も、待機するキーパーの位置が、ルールブックの図にもあるようにゴールに向かって右側の副審の後ろというのが通常なのに、ゴールの左側、主審の後ろに座らせていました。何か問題が起こるのではと (期待して?) 見ていたら、このような大きな国際試合ではなかなか見られないPK戦途中のゴールのチェンジでした。

準決勝のバーレーン戦でも、ボールをキープした日本チーム・ボランチの遠藤選手が相手選手を振り払おうとして挙げた腕が相手選手の顔のそばをかすり、バーレーン選手の顔の押さえ方と倒れ方もうまかったのですが、遠藤選手に殴ったという乱暴なプレーでレッド・カードが出ました。ビデオで見る限りは遠藤選手の手は触っていないし、完全にシミュレーションで相手選手のイエローのはずです。主審のポジションニングが悪かったせいもあるのですが、日本はビデオ・テープをFIFAに送って抗議を行なうそうです。アジアでは強い日本が審判には狙われているので、不用意な動作は慎むべきでしょう、審判のレベルを見ながらということになります。

出場停止のその遠藤と交代でボランチに入った鹿島の中田浩が決勝の中国戦で決勝点となる2点目を決めたのですから、全体の流れは日本にあったのかもしれません。決勝はクェートの主審でしたが、決してうまいと言える笛ではありませんでした。中田浩の2点目もハンドだったのかもしれません。中村俊介の右コーナーキックからのボールがファーサイドの左側に飛んで中田浩が身体で押し込んだかたちに見えましたが、右手に明らかに当たっていたようでした。神奈川の3級試験では、コーナーキックの際、出来るだけ中に入り込め、そばで見ろ、という指示を受けており、もっとそばで見ていれば明確な判断も出来たはずですし、すぐそばで見ている主審のゴールの判定なら中国選手も納得のはず。

という訳でこのアジアカップ、中国人サポーターの日本に対するプーイングのせいで他国の主審も日本に不利な判定を行なう場面が多かったようですが、審判のレベルがまだ世界レベルとは言えず、総合すると審判の判定は日本に有利に働いたという結果になったようです。こんな具合に審判の立場で見ると、大会もまた面白い見方が出来るかもしれません。これで日本は、ドイツ・ワールドカップの前年に当たる来年行われる、ドイツ・コンフェデレーション・カップ (大陸別王者決定戦) の出場権を得た訳で、日本にとってもよい経験になるはずです。また、審判の立場で観戦することにしましょう。

*アジアカップの決勝が中田の2点目で終っていたら、中国はもっと盛り上がっていたでしょう。玉田の3点目は国際政治的にも大きな一点だったように思えます。事務局


第3回「選手交替」

神奈川県では、3級審判員に昇級すると「日本サッカー審判協会(RAJ)」に登録することになり、RAJ発行の「ホイッスル」という会員向け雑誌が届きます。全国の上級審判の声が聞けるので結構面白い本です。そしてFIFAのルール改正などの説明も記載されているので、非常にありがたい雑誌です。

昨年のルール改正で「第4の審判員」のことが説明されていたので、その部分を日本協会の解説と一緒に引用してみます。

「第4の審判員」

新しい文章:

項目1
第4の審判員は、競技会規定に基づいて任命され、3名の審判員のいずれかがその職務の続行が不可能になった場合にその職務を行う。第4の審判員は、常に主審を援助する。

項目7
第4の審判員は、主審が競技者を間違えて別の競技者を警告したときや2つ目の警告を与えたにもかかわらずその競技者を退場させないとき、あるいは主審、副審の見えないところで乱暴な行為が起きたとき、主審に合図しなければならない。しかしながら、主審は、プレーに関するすべてのことを決定する権限を持つ。

理由:
項目7に メ第4の審判員は、常に主審を援助する“ と記述することによって、この項目に含まれていない不正行為にも関与することができると推測されてしまう。第4の審判員の役割が警告となる反則を知らせることまで拡大することを求めたり、望んでいるものではない。明快さと解釈上の理由から、この文章を第1項目に入れることでより適切な表現となる。

日本協会の解説:
第4の審判員が競技会規定に基づいて任命される場合、3名の審判員 (主審、副審) のいずれかがその職務の続行が不可能になったときに、その職務を務める事になっている。第4の審判員にはその他、主審を援助するための様々な任務が与えられていて、その援助の内容は各項目に具体的に示されている。1999年までの競技規則には、第4の審判員の項目の8番目に メ第4の審判員は、常に主審を援助する“ と記載されていたが、2000年の改正では、項目7となってその文章の続きに、警告や退場の際の主審による競技者の間違い、2つ目の警告を与えても退場させないとき、そして競技者による乱暴な行為があった時に限って主審に援助ができる内容が付け加えられた。しかし、メ第4の審判員は、常に主審を援助する“ の文章が項目7のはじめにあることで、その他の警告や退場となる不正行為に対してまで援助ができると拡大解釈されている。そこで、メ第4の審判員は、常に主審を援助する“ の文章を項目1に移すことによって、項目7の主審への具体的な援助の内容が明確になるようにした。なお、2002年まで メ第4の審判員は、
すべての時間にわたって主審を援助する“ としていたが、下線部分の表現をより適切にするために、本年より 「常に」 と置き換えた。

以上、「ホイッスル」からの抜粋でした。

つまり、項目7以外の警告や退場となる不正行為にたいしてまで援助できるというように拡大解釈しないようにというのが目的の一つ。確かに、第4審判員が「今のプレーにはイエローカードを出すべきだ」とか試合中に言い始めると主審も副審もやりづらいところ。また、第4審判員をおかない場合 (草の根レベルではこれが普通ですが)、大会本部に選手交代のお手伝いをして頂くことが多いわけで、大会本部の方が第4審判の職務もしなければならないと勘違いする場合もあったりで、ちょっと困るケースが時々あるようです。

さて、7月31日(土) は、主審を頼まれていた綾瀬での試合を午前中に吹いたあと、横浜市の鴨居中学校グラウンドまで車を飛ばして、県大会予選を兼ねる中学生の横浜市大会に出ている中学2年生の次男の試合を観戦しました。たまたまその試合で主審を吹いていたのが顔なじみの3級審判員の Satさん、本編にもちょくちょく登場して頂いてます。大会本部が中学校のサッカー部の顧問の先生方でした。Satさん、筆者が試合途中から観戦を始めたせいか、暑い午後の試合でしたが、一生懸命走っているようでした。試合は、筆者次男チームが前半の1点を守り切っての勝利でしたが、この試合のハーフタイムが終了して後半が開始された直後に面白いことが起こりました。

Aチ−ム (筆者の次男のチーム) が前半出場していたB君に替えて後半から交替でC君をフィ−ルドに入れたのですが、この交替を大会本部に断らなかったことに気づいたため、Aチームの監督があわてて選手交替を本部に届けに来ました。あとで Satさんから聞いた話しによると、メンバ−表のチェックと選手交替は本部でやるという打合わせだったようです、まあ、よくあることですが。すると、大会本部の方がアウトオブプレーになった時、後半開始後2分くらいでしょうか、主審を本部ちかくまで呼び、選手交替の手続きをせずに1名の選手がフィ−ルドに入っていたことを告げました。主審の Satさん、ここでとりあえず、後半より出場している選手のC君を呼び、警告しました。

その後、プレーが再開されたのですが、C君が試合前のメンバー表でリザーブの選手として登録されていないこと (チーム役員のミス) に大会本部が気付き、大会本部がまた主審を呼びました。主審はその連絡に基づき、C君をフィ−ルド外に出して選手登録がされていないので先ほどの警告を取消すことを宣告しました。登録されていない選手にカードは出せないという判断です。おそらく試合後の報告書には記載されるでしょうが。で、主審が、前半出場していたB君をフィ−ルドに戻すように言って試合が再開されました。怪我のためすでにスパイクを脱いでいたB君ですが、主審の指示によりフィ−ルドへ入ろうと準備していました。そのときに大会本部がまた主審を本部近くまで呼び、「今から入るB君に警告してください。」と要請しました。

主審の Satさん、本部に言われるのもおかしいという顔をしながら、それから、交替してベンチにいたB君にはミスがなかったのでB君への警告はないのではないかと本部の方と協議をしていたようですが、これ以上のドタバタで試合が中断するのを避けるため、本部の要請によりB君に警告にしてB君がフィールドに入り試合が再開されました。この時、筆者も本部席のそばにいたので、次の試合の主審の準備をしていたもう一人の3級審判員とともに、本部の方から意見を求められました。B君本人には何のミスもないものの、後半開始時に選手交替の手続きをしないでベンチにいたということは、勝手にフィールドを離れたこととなるので、やはり警告の対象になる、というのが3級審判員としての一致した意見でした。しかしそういった意見をもとに、大会本部の方が主審の Satさんに警告を要求するのもおかしい話しですが。

試合終了後、Satさんと次の試合の審判員と反省をこめて話しをしました。Satさん、後半開始する際に選手交替の確認をしていればカードを出す必要もなかった、本部に任せすぎた、という反省を先ず述べられてから、但し、やはりB君に対する処理に関しては、

1.主審の承認を得ずにフィ−ルドから離れたと考えられるので警告。
2.(メンバー表に登録されていない選手との)交替が成立していないので、フィ−ルドにただ入ら
  なかったということで警告の対象ではない。

どちらの処理が正しいのか、疑問点があるというのが自分の意見と述べられました。3級審判員同士のちょっとした議論になりましたが、筆者はやはり 1.の判定が正しいと意見を述べました。一応、アトで県協会に確認してみる、ということになりました。以下は、あとでSatさんから連絡のあった 県協会のコメントです。

「判定は、1.で正しい、それを認めてしまうとゲ−ムにならない。そのために承認を得ずに入退場をすることを罰するル−ルがあるということ。但し、チームも大会本部もだらしない、選手が可哀想。また、審判員としても後半の際にはチェックが必要 (チェックを任せていたとしてもチーム・本部に一言聞く等)。」

筆者としては、主審を呼び付けて警告を出すよう要請する大会本部の所作も問題だと思うのですが、それも第4審判員の職務項目にもない所作ですので。それから、県協会の方がご指摘の「選手がかわいそう」というのはまさしくその通りで、チームの指示でベンチにさがったB君、訳のわからないままイエローカードをもらってしまったのですから。また、あとで聞くと、登録されていなかったC君、これが公式戦初試合だったとのことで、チームメートに「幻の2分間出場」ということで慰められているということです。

チーム役員の方には、普段の練習試合の時から、メンバー交替には公式戦同様、気を使って頂きたいものです。また、大会本部の方にも、ルール・ブックのおさらいが必要かもしれません。そういった間違いが起こらないように大会本部の方にものを言うのも上級審判員の役目なのかもしれません。

でも、あの「幻の2分間」でもしもC君がゴールを決めていたら、一体、どのような判定をするのでしょうか。中学生として最後の公式戦に臨んでいた3年生選手もいたのですから、いろいろ考えると審判も大変な訳です。


第4回「ハイ・ボールの競り合い」

最近は仕事も忙しくて大変ですが週末は必ず審判を入れています。中学生の試合とか、ジュニアーの市大会の決勝トーナメントの試合とか、横浜市から依頼される主審もありますが、社会人の試合も増えて来ました。必ず行くようにしているのが県の社会人3部リーグと区の社会人リーグの試合。青葉区はサッカー委員会のメンバーでもあるので他の試合の審判の指導も行なうようにしています。神奈川県の3部リーグはチームの帯同ですが、80分間走りきるために前日は早めに寝るようにしています。でも、セミナーで指導されたように週の平日に走って調整する時間を取るのがなかなか難しいところです。3部リーグはもう3〜4年行っているせいか、このブロックでは筆者の審判に異議を唱えるようなチームは少なくなりました。ちょっと物足りない感じ。それでも新規に参加してくる若いメンバーのチームの中には、今までちゃんとした審判で試合をしたことがないのではないかと思えるようなプレーをするチームもあったりで、楽しませてくれます。

特に目立つのが手を使うプレーとジャンプしてハイ・ボールを競り合う時のプレーでしょうか。サッカーは手を使うことが出来ないスポーツという基本がわかっていない社会人が多いことには驚かされます。手を使うことが出来るのは、スローインの際のスローアーとペナルティ・エリア内のキーパーだけで、それ以外でボールを手で扱えばハンドリングで直接フリーキックの反則です。そして手を使ってもいいのではないかと勘違いしているプレーが、例えばルーズボールを競り合う際に身体を入れる時手を入れてしまうこと、ボールを持ったプレーヤーを追いかける際に手を使ってチャージしてしまうこと、ボールをキープしているプレーヤーでも手を使って相手プレーヤーを押さえつけてしまうこと、などなどでしょうか。筆者としては、試合開始早々に、手を使ったホールディング、プッシングなどのファールに対しては、自分の審判としての基準を示すためにも厳しめの取るようにしています。その基準がぶれないように、つまり一定の基準で反則が取れたと自覚出来る時は試合コントロールにも自信が持てるようになります。今のは取るべきだったかなとプレーを流して後悔するような時は要注意です。

そして割とおろそかになり易いのがジャンプしてハイ・ボールを競り合う時のジャッジ。ゴールキーパーからの高いパントキックなどはボールに向かってジャンプするので相手プレーヤーをしっかり視界に取りにくいこともあります。空中で競り合ってバランスを崩して着地する時に足を捻ったり、背中から落ちたり。斜めにジャンプされたり、空中で手を使われたりすると予想していない力がかかるので、とても危ないプレーになります。特に手で相手の肩を押さえたり、空中で手でプッシングしたり、これらもしっかり反則を取ってやるのが主審の仕事。次からそういったプレーが出ないようにすることで、プレーヤーを危険から守るわけです。この時の主審のポジションとしては、ボールの落下点近くまでしっかり走り込み、横から見ることが出来るように回り込むこと。ゴール前では、どちらの頭に当たってゴールラインを出たかどうかを見極めることも重要になってきます。というように言葉で言うのは簡単ですが、社会人の試合になるとピッチも広いしロング・キックも多いので走り込むのが大変です。なのでやはり、普段からのトレーニングが必要ということになります。

さて、横須賀のグラウンドで行われた社会人の試合、後半の30分を過ぎた時間帯、残り時間が10分程度で、1点負けているチームがゴール前にロング・キックをポンポン放り込んできます。こちらもバテバテですが、ここからが主審としての腕の見せ所です。ハーフウェイラインの右サイドからゴール前にロングキックが上がりました。主審としては「蹴るかな」と感じた瞬間に走り始めるのが先ずは大事。走りながら落下地点あたりのプレーヤーの競り合いに注意を払います。空中のボールは見なくてもよいでしょう。攻撃側のFWの選手が一人タイミングよく飛び出しました。副審をちらりと見ましたが、オフサイドはなかったようです。そしてこの時です、守備側のゴールキーパーも飛び出して来ました、勇気あるプレーです。ボールはペナルティエリアのラインぎりぎり当たりに落下しそうでした。攻撃側のFWのプレーヤーとゴールキーパーのボールに追いつくタイミングとしてはほとんど同時でしたが、キーパーが飛び出すのをちょっとためらった分だけ攻め側のFWのプレーヤーの方が一瞬早くヘッディングでボールに触ったようでした。そして次の瞬間、パンチングしようとしたキーパーと攻め側のプレーヤーが空中でぶつかって二人とも腰から落下してしまいました。ボールはゴールポストの横をすりぬけてゴールラインを割りました。

むずかしい判定です。キーパーもボールをクリアーしようとプレーした訳でたまたま攻め側のFWのプレーヤーとぶつかったものです。接触地点はわずかにペナルティエリアの外側の空中だったようです。筆者の判断のポイントとしてはFWのプレーヤーがヘッディングをしたあと、そのボールを再び追いかけてもゴールラインを割ったであろうというタイミングであった、シュートに持ち込める余裕はなかった、というところ。但し、キーパーは故意ではなかったにせよ、普通のプレーの場合でもレイト・チャージ、それもペナルティエリアの外であるため、ボールに触れなかったにせよ手を伸ばしてチャージに行くのは反スポーツ的行為かもしれません。腰から落ちたキーパーとFWの2人のプレーヤーですが、何とか大怪我にはならなかったようです。筆者、ちょっと間を置いてから、キーパーにイエローカードを出して、接触地点で、この場合、ペナルティエリアの少し外側でしたが、攻め側の直接フリーキック、いうジャッジを行ないました。

FWのヘッディングによってゴールだったら、キーパーへの警告は出さなかったでしょう。一方、キーパーの方が先にパンチング出来たとしてもそれがペナルティエリアの外側だったなら、おそらくレッドカードでしょう。でも、キーパーのチャージが例えば攻め側のプレーヤーの視界に入ってきたのが理由でヘッディングがうまく出来なかったという可能性がある場合は、「決定的な得点の機会の阻止」に当たるのではないかという疑問点が筆者には瞬間ですがありました。非常に難しい判定、それも瞬時にその判定を行なわなければならない訳で、ちょっと恐くなりました。今回の場合は、双方のチームからのクレームは出ませんでした。フリーキックの結果はキーパーにセーブされて得点はありませんでした。

ゴール前のこれと似たケースで、上記のケースにアドバンテージがからんだプレーが、実は先日の少年の試合でありました。ドリブルでボールを持ち込んだ攻め側のプレーヤーがゴールキーパーと1対1になって、キーパーをかわして外側に逃げた攻め側のプレーヤーの足をキーパーが手でチャージして転ばしてしまったプレーです。その瞬間に筆者は笛を吹きました。キーパーにイエローカードでペナルティキックからの再開を頭に描いたのですが、この時は、外側に転がったボールを攻め側のフォローで走り込んだプレーヤーが笛の直後にゴールネットに蹴り込んだのです。これも難しい判定で、フォローで走り込んで来たプレーヤーが筆者の視界に入っていなかった訳ではなかったのですが、普段からの想定問答 (シミュレーション) により、瞬間的にペナルティキックの笛を吹いたわけです。このケースでは、ある程度、アドバンテージを見るべきだったかという反省はありました。運悪く、この時のペナルティキックが外れてしまったこともあるのですが。

細心の注意を払って、それも出来るだけボールのそばでプレーを見るようにしていても、このような難しい判定を強いられる時があるので、審判も大変です。少年の試合でも、プレーヤーは皆一生懸命プレーしていますし、文句の多い社会人の試合はなおさらです。なので、ちゃんと走っていない主審を見ると、ちょっと腹がたってくる訳です。でも、上記のような判定、第一のケース (キーパーとの空中での競り合いの結果、キーパーにレッドでなくイエローだけでよかったのか) とか、第二のケース (アドバンテージを優先してプレーを流してシュートまで行なわせるかどうか、特にペナルティエリア内でPKを選択するのか、流すのかといった場合) とか、こういった難しいケースの疑問点を、いつかチャンスがあったら研修会とかで質問してみようと考えています。


第5回「ゴール前の間接フリーキック」

試合中の判定で疑問点が生じることがあります。そういう時は前々回のように神奈川県の上級審判員に聞くことも出来ますが、今回は初めての試みとして「日本サッカー審判協会(RAJ)」に質問メールを入れてみました。RAJのホームページを開くと筆者の質問とそれに対する回答がアップされています。今回はそれをご紹介することにします。

【質問】

社会人の試合を審判する事が多いのですが、たまたま依頼を受けて小学6年生の大会の主審を行なった時のことです。ゴールキーパーがゴールエリア内、ほぼ真ん中で味方からのバックパスを手でキャッチングしてしまいました。間接フリーキックはルール通り違反の起きた地点に最も近いゴールラインに平行なゴールエリアのライン上から攻撃側の選手が行なう事になりました。

主審である私からは、手をあげて「間接だよ」と声をかけましたが、攻撃側のテクニカルエリアのコーチから「直接蹴れ、守りの身体にぶち当ててゴールに叩き込め。」との指示が飛んできました。キッカーは身体の大きい選手が選ばれて思いっきり蹴り込んできました。その結果、ゴールポストに挟まれたゴールライン上に並んだ守備側の選手の腰あたりに当たってゴールネットにボールが転がりました。

私は、「ゴール・キック」と判定、得点を認めませんでした。試合後、攻撃側のコーチの方から、「クレームではありませんが、判定理由を聞かせて下さい。」との質問があったので、「いろいろな判断があると思いますが、直接蹴り込まれたボールをゴールライン上から後ろに下がった選手に触れてからゴールネットに転がったものと判断、直接ゴールなので、ゴールキックの判定としました。但し、大人・子供関係なく、5メートル前後の距離から思いっきりボールを蹴り込ませる、それもわざと相手にぶち当てようとする行為は、サッカーとは言えないのではないでしょうか。場合によっては(第12条の退場となる反則)に当たるのではないでしょうか。」と説明しました。

3級昇進の際の講義でも、「結果的に他のプレーヤーに触ってからゴールしても、間接フリーキックを直接蹴り込むことは認められない。」という説明を聞いた記憶があるのですが。でも、他の上級審判員と話しをする機会があり、「それも作戦の一つでしょう。コーナーフラッグの近辺で攻撃側の選手が守備側の選手にわざと当ててコーナーキックを狙うこともあるでしょう。」という意見もあったりで、少々、悩んでいます。

日本サッカー審判協会 事務局からの回答です。

【回答】

キッカーが蹴ったボールが守備側の選手に触れたのが、ゴールラインの外側なのか内側なのかによって判定が分かれると考えます。

外側の場合 ご指摘のようにゴールキックです。

内側の場合 インプレー後相手に触れてゴールしたのですから得点です。

あくまで審判員は競技規則にそって解釈すべきであると考えます。

+++

当たり前と言えば当たり前の回答です。筆者としては判定を下すとき、キッカーがゴールライン上に並んだ守備側のプレーヤーの例えばお腹でも狙って蹴ろうとしても反則ではないのか、という疑問点がどうしても払拭出来ませんでした。距離は5メートルそこそこです。この場面では大きな怪我もなかった訳ですが、キッカーの狙い通り守備側のプレーヤーのお腹に入ったり、例えば顔面に当たって鼻血が出たり、大怪我が予想出来る場合でも、それでも反則にはならないのか、故意に狙ったとしたらそれこそレッドカードが対象ではないのか、個人的には納得出来ないプレーでした。コーナーキックを狙おうとして相手プレーヤーの足を狙ってボールをコントロールしてキックするのとはちょっと違うように感じるのです。

もっとも、これが社会人の試合でしたら、「直接、蹴ってくるぞ。触らないでゴールキックにしようぜ。」という判断が出来る訳で、やはり間接キックを直接蹴り込んでくるのは、よい作戦とは言えないでしょう。守備側のプレーヤーに当てることを狙ってキックしてくるのが明白な場合には、守備側のプレーヤーはしっかり防御をしながら後ろに下がればよい訳です、外側で当たればゴールキックなのですから。つまり、この少年の試合の攻撃側のコーチの指示は、ルールをよく知っているチームが相手であったならば、通用しない作戦なのです。

そういったいろんなこともわかって欲しくて、守備側のプレーヤーにボールが当たったのがどの位置なのか、ゴールラインの内側なのか外側なのかは、実は筆者にとってはあまり重要ではなかったとも言えます。RAJに出した質問には細かいことをくどくどと書きませんでした。筆者が試合後、このコーチに説明したのは、「キックされる時点で守備側のプレーヤーはゴールラインの外側に居たのは明白で、キックされた瞬間に5メートルの至近距離をボールが飛んでくる時間内に守備側のプレーヤーが内側に入り込むのは不可能。ラインの外側で当たったと判断しました。それよりも、このキックでプレーヤーが大怪我した場合を考えるべきではないでしょうか。それがスポーツマン・シップのはずです。」と。こういう判定をするサッカーの審判が一人くらいいてもよいのではないでしょうか、たとえそれがルール上間違いと言われても。プレーヤーを怪我から守るのも審判の仕事の一つと信じていますから。


第6回「競技規則の改正に伴う研修会の開催 (1)」

神奈川県サッカー協会の「2004年 競技規則の改正に伴う研修会」が8月の末から9月にかけて5回にわけて開催されました。3級審判以上の神奈川県のサッカー審判員はこの研修会で年1回の筆記試験を受けて新しいルールブックを渡されることになります。筆者が出席したのは第4回目の研修会で第5回目が予約制であったせいか多数の上級審判員が出席しました。そのため筆記試験の結果が出るのに時間がかかり、時間調整のための質疑応答の時間が長く設けられて、終了が午後9時を過ぎてしまいました。でも、いろいろな質問が出て、それに対する回答・説明の中で今までの疑問点が解決出来たりで筆者としては実りの多い研修会となりました。今回から2〜3回に分けてこの研修会のことを日記してみます。先ずは、研修会の冒頭に行われた20分間の筆記試験です。

筆記試験の準備として筆者の場合は、合計3〜4回くらいの筆記試験を受けさせられた3級昇格試験の時もそうでしたが、第12条の直接フリーキックの10項目、間接フリーキックの8項目、警告と退場のそれぞれ7項目はもちろんのこと、第5条の主審の任務の18項目と第6条の副審の任務の7項目の暗唱を、筆記試験のだいたい1週間くらい前から、例えば通勤電車の中で、例えばお風呂で繰り返し行なうことにしています。ゴールの大きさとかフィールドの長さとかボールの重さ・外周・気圧は、ほとんど常識なので、この暗唱さえ確実に出来ていれば、100点満点中の合格点である80点は問題なくクリアー出来ます。100点にどれだけ近づけるかは、ルールブックの細かいところをどれだけ思い出せるかが勝負でしょうか。今回の紛らわしかった問題をピックアップしてみます。

【質問1】 「次の( )内の文字を埋めよ。 ボールは球形で皮革または他の ( @ ) な材質。重さが ( A ) に 450g以下、410g以上で、空気圧が ( B ) で 0.6〜1.1気圧のものである。」

とても紛らわしい問題で、ボールの重さ「410g以上、450g以下」、空気圧「0.6〜1.1気圧」、外周「68cm以上、70cm以下」は、3級昇格試験でも何回か出た問題で既に常識として覚えているのですが、ルールブックにあるその前後の言葉まで暗記しきれていませんでした。正解は順番に、「@適切、A試合開始時、B海面の高さ」ですが、筆者の回答は、「@均質な、A1気圧(海面の高さ)、B試合開始時」だったような気がします。AとBが逆なのですが、いずれにせよ、しょっぱなから減点でした。

【質問2】 「次の場合の正しい試合の再開方法を述べよ。 

C キックオフからのボールが直接相手方ゴールに入った。 

D ゴールキックからのボールが直接味方ゴールに入った。 

E 直接フリーキックからのボールが直接味方ゴールに入った。 

F コーナーキックからのボールに、ピッチ外から入ってきた犬が飛びついた。 

G スローインのボールが味方ゴールキーパーに投げられ、味方ゴールキーパーはボールをゴールに入るのを両手で止めようとしたが、ボールはゴールに入った。

H 相手ペナルティエリアの外側で間接フリーキックが与えられたが、主審が間接フリーキックを示す腕を挙げるのを忘れ、ボールは直接相手方ゴールに蹴り込まれた。」

これも紛らわしい問題です。正解は順番に、

C 得点を認め相手チームのキックオフで再開。

D インプレー前はゴールキックのやり直し、インプレー後は相手チームのコーナーキック。 

E 相手チームのコーナーキック。 

F 犬が飛びついた地点でドロップボール。 

G 得点を認め相手チームのキックオフで再開。

H 得点を認めず相手チームのゴールキック。

です。

C・D・Eの問題は、神奈川県サッカー審判協会が出している、「よい審判をするために」という神奈川県の審判員のハンドブックに説明されているいつもの問題。Fは「インプレー中に競技規則に記述されていない事由で競技が一時的に中断された時」で、犬が出てくればコーナーキックだろうがスローインだろうが、ドロップボールでしょう。

Gは、ルールブックの後ろに記載の「競技規則に関する質問と回答」からの問題で、実は本編でも「続々審判日記第8回」で英語文まで引っ張り出して研究した箇所なので、回答は簡単でした。Hもルールブックの「質問と回答」に記載の問題で、いつかの審判研修会でもある方が神奈川県大会の少年の決勝戦で同じことがおこったのですが、と質問されていた問題です。いろいろな試合を見ていると、間接フリーキックで手をあげたあと、選手交代のため登録用紙を確認したりして、再開する時に手をあげるのを忘れている主審が結構いるので、筆者も要注意の項目です。これで、ゴールの判定をしてしまうともめるのは間違いありません。

CとDは、「そんなこと実際に起こるのか」という疑問が生じるかもしれませんが、ルールブックの「質問と回答」では「強風によって吹き戻された」という事態を想定しているようです。また、Dは、味方ゴールキーパーへのバックパスが直接味方ゴールに入った場合などです。なので、同様のケースで味方間接キックの味方ゴールへの直接ゴールも相手チームのコーナーキックからの再開です。上記の「よい審判をするために」には、「コーナーキックのボールが直接味方ゴールに入った場合」まで規定してあります。「そんなバカな、105mもバックパスするのか」という疑問もあろうかとは思いますが、コーナーキックで1点を取りに行くため味方ゴールキーパーが相手ゴールまで攻めあがっていて、コーナーキックされたボールが相手ゴールのゴールポストとバーの角に当たって内側に跳ね返り、審判の頭にぶつかって勢いを増し、更に突風で空中をボールが飛んでいき、無人の味方ゴールへ吸い込まれる、場合だってあるかもしれないのです。この場合も、ボールが吸い込まれた側のゴール (ここでは味方ゴール) で相手チームによるコーナーキックが再開の方法です。

さて、試験の結果は、何点だったかは教えて頂けないのですが、まあ、ともあれ合格でした。でも合格点の取れなかった出席者が何人かいたようで、最終の研修会での再試験となったようです。いつも厳しい神奈川県サッカー協会です。

(続く)



第7回 「競技規則の改正に伴う研修会の開催 (2)」

さて、研修会の続きです。筆記試験のあとには、神奈川県の上級審判員が主審を務めた関東大会の試合のビデオを見ながら、主に第12条の「ファウルと不正行為」に関する講義が行われました。主審のポジショニングがいいとか悪いとか、そのファウルは取るべきだったとか、流したのはよかったのか悪かったのかとか、笛の吹き方の強弱はどうだったとかが説明されました。面白かったのは、そのビデオの主人公、つまり主審を務めた本人がこの研修会で受講していて、「どうしてあの場面で吹いたのか」とか、「ビデオを見てみるとあの判定は止めないでアドバンテージにした方がよかったのではないかと思わないか」とか、本人の考え方・判断の仕方、その時の心理状態まで聞かせて頂いたことです。さすがに神奈川県の上級審判員の研修会というところでしょうか。

それから、「2004年競技規則の改正」の説明。主な改正は2点、(1) 「第10条 得点の方法の競技会規定」で、「試合の勝者を決定する方法」として、新たに「アウェーゴールと延長戦」の説明が加えられ、「ゴールデンゴールの進め方」が削除されたこと、(2) 「第12条 ファウルと不正行為」で、「得点を喜ぶためにジャージを脱いだ競技者は、反スポーツ的行為で警告されなければならない。」が「決定6」としてルールブックに新たに加えられたこと、です。

(2)に関しては、2001年のFIFA改正で、「競技者はジャージを脱ぐことで警告を受けることはなくなった」際に、日本協会は引き続き、「ジャージを脱いだ場合、反スポーツ的行為で警告する」と決定していたので、日本においては、今年の改正は実質的な改正にはなっていないという解説がなされています。今回の研修会では、「ジャージを脱いだ時の判断」として英文の説明書と写真も配布されました。 ジャージの脱ぎ方の限度としては、「The removal of a jersey is defined as removing the jersey over the head or covering the head with the jersey.」とあり、つまり「ジャージの脱衣とは、ジャージを頭から脱ぐこと、あるいはジャージで頭を覆うこと、と規定される。」と直訳できます。ジャージをすっかり脱いでしまうこと、また脱いだジャージを手でぐるぐる回すことなどは、完全に警告の対象。ジャージは着ているもののジャージの前面をはだけだし頭の後頭部に引っかけて頭を完全に出すこと、あるいは前面部分で頭・顔を覆うことも警告の対象としています。ジャージの前面をはだけ出しお腹だけ見せるのはセーフのようです。プレーヤーの皆さん、注意しましょう。

そして(1)ですが、日本協会の解説によると、ゴールデンゴールを廃止とした大きな理由は、延長戦のキックオフ後、相手がボールに触れることなく得点され勝敗が決まってしまうことや、エンドが替わらないことなどによる不公平感があるからとのこと。それらの理由により多くの協会が延長戦・ペナルティキックの方法を望んでいるという FIFA の調査結果が明らかになったとの説明です。但し、それぞれの協会の競技会規定に従うことが出来るということで、日本協会傘下で行われる競技会では「Vゴール(ゴールデンゴール)」を適用する場合もあるとのことです。でもJのリーグ戦でも今はもう「Vゴール」はやらないことになっています。

「アウェーゴール」は、欧州選手権でもW杯の予選でも用いられている方法で、改めて FIFAルールブックに記載することになったもので、「競技会規定には、ホームアンドアウェー方式で競技する場合で第2戦後にゴール数が同じであるとき、アウェーグラウンドで得点したゴール数を2倍に計算する規定を設けることができる。」という文章が加えられました。総得点が同じ場合、アウェーでのゴールが多い方が勝ちというものです。

この「アウェーゴール」で思い出すのは、1998年W杯フランス大会のアジア予選。日本がマレーシアのジョホールバルでイランを岡野の延長Vゴールで破ってW杯の初出場を決めたあとのイランの試合です。規定により、アジア4位のイランとオセアニア1位のオーストラリアがホームアンドアウェー方式で最後の出場権を賭けて戦った2試合。初戦はテヘランでイランが1対0で勝利し、第2戦目はオーストラリアがホーム、確かシドニーでの試合で2対0で後半のロスタイムを迎えていた時。そのまま終れば対戦成績が1勝1敗、2試合の得失点差は2対1でオーストラリアの勝ちあがりが決まる瞬間だったのです。試合は負けを覚悟したイランがロスタイムにようやく1点を返したところで終了、オーストラリア人の誰もがW杯の初出場を疑わなかった次の瞬間で、総得点は同じだからPK戦をするのかと、会場が静まり返っていた中で、大喜びしてグラウンドに走り込んで来たのはイランチームの選手と監督。つまり、対戦成績は1勝1敗、実際の得失点は、2対2なのですが、ロスタイムにイランが入れたこの1点がまさしくアウェーゴールで2倍に計算されるので、「勝者を決定する方法」としては、計算上では2試合合計の得点が2対3となり、イランがW杯の出場権を獲得したのでした。

第2戦目の試合前からおそらく計算していたのでしょう、イランチーム。第2戦目が、3対0、2対0でオーストラリアが勝った場合ならイランの負け、1対0で同点でPK。但し、1点でもアウェーゴールを決めれば、3対1で同点、2対1、1対1でイランの勝ち。イランの2点差負けでも、4対2、5対3ならイランの勝ち、というように。ロスタイムに入りオーストラリアは集中力を欠いた訳でもないのでしょうが、オーストラリアに2点目を取られてからのイラン、追加点を取られぬように守り抜いて守り抜いて、点数を取りにいくそぶりを見せずに、もしかしたら「もう負けた」とあきらめたそぶりでプレーしていたかもしれません。少ないチャンスで1点を取りにいってロスタイムぎりぎりでのアウェーゴール、したたかなイランチームでした。W杯のアジア最終予選の組合わせでも、日本は確かイランと同じ組のはず、アウェーゴールが採用されるかどうかはわかりませんが、気を抜かないでドイツW杯の出場を決めてもらいたいものです。

(続く)



第8回「競技規則の改正に伴う研修会の開催 (3)」

通常の研修会であれば、筆記試験のあとルール改正の講義が行なわれ、事務連絡があって筆記試験の結果発表があって終了。なのですが、この日の受講者が多いこともあって、採点に手間取っている間の質問コーナーとなりました。いろいろあった質問の中から筆者の日頃の悩みを解決してくれた4つの質問を日記することにします。

[1]番目の質問は、「ハーフタイムに審判に対し暴言を言った選手に対する処罰は?」で、講師の方からは、「大変よい質問ですね。」と説明が始まりました。ノ・・かねてより、審判が権限を行使出来る時間帯について競技規則には記載されていない問題点があり、本年のルールブックの発行にあたり「日本協会審判委員会」は第147ページに、「主審の競技規則を施行する権限の開始と終了」の説明を加えています。それによると、「権限行使の開始 = 主審が試合のために競技のフィールドに入った時、 権限行使の終了 = 主審が試合終了の合図(笛など)をした時、この間は、ハーフタイムも含めて競技規則に従って主審の権限を行使出来る。」と明確に記載されています。なので、質問に対しては、「ハーフタイムであっても、第12条に従って、暴言をはいた選手は退場処分」が正しい答えです。ノ・・

今年のルールブックに記載された項目であるということで、タイムリーな質問であったと言えるわけです。使用するボールのチェックとか用具のチェックとか、あるいは試合報告書の提出とかも主審の任務の18項目に記載されていますが、これは試合の前後の任務のこと、その他の15項目が権限行使の開始後から終了までの時間での主審の任務となります。だから、試合開始のコイントスもフィールドに入ってから観衆も含めた皆の前で行なうことの指導も受けましたし、試合終了後の例えば審判に対する暴言に対しては、レッドカードを出さずに試合報告書に記載するしか出来ない、といった指導もセミナーで受けたわけです。

そして[2]番目の質問。どなたかが後ろの方から手を挙げて、「登録されていない選手がプレーしてゴールを決めてしまったら、どうするのか?」という質問でした。そうしたら、違う方が手を挙げて、「それに類似した試合が先日あったとの連絡を受けた。登録されていない選手が本部のチェックミスで交代の申請なしで後半開始に交代で入ってきてプレーを開始、しばらくして本部からの連絡で主審がその交代に気が付き、登録されていない選手をフィールドから出し、交代で引っ込んでいた選手に対し警告。これが正しいのかどうか?」という質問、ビックリしましたね。本編、本年の第3回で日記したケースと全く同じケースだったからです。と言うよりも、その第3回での主人公の Satさんがご相談されたのが、今、質問された上級審判の方なのかもしれません、横浜の中学の試合だとおっしゃっていましたから。第3回の際の筆者の悩みの一つが、「その登録されていない選手がゴールしてしまったら、どうするのでしょうか。」だったので、その回答が聞けそうです。

講師の方の説明。先ずは、登録されていない選手と交代してしまったもとの選手は、入ってきた選手が登録されていようがいまいが、申請なしでの交代で出たので、ハーフタイムであっても勝手にフィールドを離れたと判断、警告の対象。登録されていない選手はすぐフィールドから出す、登録されていないので警告の対象外。このようなミスが起こらないよう本部も審判も注意するべし、特に主審は、後半開始する際に、交代選手の有無を確認しておくのが最低限求められる任務とのこと。そして、仮に主審が気付く前にこの登録されていない選手がゴールを決めてしまったらどうするのか、については、ルールブックの「競技規則に関する質問と回答」、本年のルールブックでいえば第84ページに記載、とのこと。「試合中に主審がこの誤りに気付いた場合は、その(登録されていない)競技者をフィールドから離れさせ試合を続け、その状況を関係機関に報告する。試合後に気づいた場合は、主審はその状況を関係機関に報告する。」とあります。講師の方の説明によると、もしもこの登録されていない選手がゴールを決めて主審がゴールの判定をしてしまった場合、(1)ゴール直後、次のキックオフが始まる前に主審が気が付いたのであれば、得点を取消し登録されていない選手をフィールドの外に出して、ボールがゴールラインから出たのでゴールキックからの再開。(2)次のキックオフ後の試合中に主審が気が付いた場合、登録されていない選手を出して、得点したことを含めて試合後の報告書で関係機関に報告。(3)試合後に主審が気付いた場合も同様に報告書ですが、試合後に気付いたこと、なので試合中はその登録されていない選手を出さなかったことを含め、得点したことと合わせて報告。

両チーム、特に得点を入れられたチームからは、(2)と(3)の場合にクレームが出るのは間違いないでしょう。この場合は、主審のミスでもあるので、どちらを勝者とするのか、スコアをどうするのかの判断は関係機関、あるいは主催者にゆだねるということになります。なので、このようにもめた試合の場合は、試合終了後に選手から挨拶を受ける時に選手の前で、スコアを言ったり、どちらの勝利かを言ったりしないようにセミナーでは指導されました。筆者の場合は、このようなミスがない場合でも、どちらのチームが勝ったのが明白な場合でも、選手にはスコアを言わないようにしています。いずれにしても、この質問にあるようなミスがあった場合、Jリーグとか国際試合であったなら、この審判は次から絶対にお呼びがかからないのは間違いありません。

他にもいろいろな質問があったのですが、今回、日記するのは最後の2つ、「ゴール前での決定的な得点の機会の阻止」です。[3]番目の質問は講師の方からで、「ゴール前、ペナルティエリアのちょっと外くらいにあがったハイ・ボールをゴールキーパーと1対1でせった時に攻撃側の選手がジャンプしてキーパーより早くヘッディングし、そのあとキーパーに空中でチャージされて倒れた。ボールはゴールを外れてゴールラインを割った。キーパーに対して警告か退場か。」という質問。まさしく本編第4回の「ハイ・ボールの競り合い」での筆者の悩みです。講義では、「警告」に手をあげた受講者より、「退場」に手をあげた受講者の方が多かったでしょうか。筆者は「警告」に手をあげました。講師の方の説明は、「キーパーのレイト・チャージが攻撃側の選手の目に入って気になったため正確なヘッディングが出来なかったとも判断されるわけで、決定的な得点機会の阻止に当たるのでレッドカードの判定。」とのことでした。会場からも「ホ〜ッ」という声が漏れました。

それでも筆者としては完全に納得出来る回答ではなかったと思っています。ハイ・ボールをジャンプで競り合いにいくのはキーパーであろうがフィールドのディフェンダーであろうが普通のプレーだと思うし、少しでもプレッシャーを与えてミスを誘おうとするわけで、気になってもらうのは当たり前と言えば当たり前。レイト・チャージになったので反則は仕方ないところで、ペナルティ・エリア内であればペナルティ・キックです。多分、主審として見るポイントはペナルティ・エリアの外での競り合いでキーパーが腕を伸ばしてチャージにいったのかどうか、でしょうか。キーパーの方が早くパンチングしたとしたら、ハンドで決定的な得点の機会の阻止なので、退場だからです。出来るだけそばで見ないとわからないはずですし、とても難しい判定になると思います。

[4]番目の質問は、そのゴール前のハンドとプレーオンの問題。これも先ずは講師の方からの質問、「ゴール前の混戦からキーパーがパンチングしたボールをちょっと下がり気味で待っていた攻撃側の選手が素晴らしいシュートを蹴った。ボールは一直線にゴールの枠内に飛んだが、キーパーは前に出ていたため防ぎきれず、思わず守備側の選手が手を出して止めてしまった。ゴール前に詰めていた攻撃側の選手がいたので、プレーを流そうかどうか主審が一瞬とまどったが結局、ちょっとの間をおいてホィッスル。その主審のホィッスルとほぼ同時に、跳ね返ったボールを詰めていた攻撃側の選手がゴールに蹴り込んだ。」というケース。筆者も悩んだケースとほぼ同じケースです(本編第4回)。「判定としては、手を出してしまった守備側の選手を退場にして、ホィッスルで止めたのでペナルティ・キックがこの場合の再開方法。攻撃側からは、『流せよ、ゴールだろ』とクレームは言われるだろう。この場合、主審としては、ボールが手でとめられた瞬間、流さないで、即、ホィッスルか、それとも、流してシュートをさせるか、瞬間に判断しなければならない。どちらを選択するか。」という質問です。

他の受講者はどのように考えていたかはわかりませんが、上級審判員ばかりなので同じような経験を詰まれた方も多いはずで、ウンウンとうなづいている受講者もいました。筆者としては、以前から悩んでいたケースなので、いろいろ考えが頭の中を駆け巡りました。ペナルティ・エリア内なので、プレーオンをかけるわけにもいかないが、ボールが手で止められた瞬間にホィッスルを吹かなければ流したことになり、流したあと攻撃側にシュートをさせその結果待ちということになるわけで、この場合のようにシュートが決まれば攻撃側も納得するだろうが、手で止めた守備側の選手には退場なのか、警告なのか。また流したあとのそのシュートが外れた場合、あるいはゴールポストやディフェンダーにあたり跳ね返った場合、どうするのか、プレーを戻してペナルティ・キックにすることは出来るのか、などなど。

そして講師の方の回答は、「僕だったら、即、ホィッスルでレッドカードを出してペナルティ・キックをさせます。PKにするのか、流して攻撃側にシュートのチャンスを与えるのか、はたまたそのシュートが決まるのか決まらないのか、そういった選択権を主審が持っているようで、ホィッスルを吹かないで流すことにより、その結果責任が主審に降りかかるようなことになる。そんな結果責任は主審も負えないわけで、それならPKにして入るか入らないのかの結果責任はあくまでもプレーヤーに負わせる、という考え方のほうが簡単明瞭で、プレーしている方も観ている方も納得の度合いが高いでしょう。」でした。なるほどと言うか、感心と言うか、感激と言うのか、簡単に見えるゴール前の判定もここまでの考えがあっての判定であるというのは、これこそ、「サッカー審判道」と言えるのかもしれません。

筆記試験の結果は合格で、何点、取れたのかはわかりませんが、審判手帳に更新のハンコを押してもらって、午後9時に研修会は終了しました。

(研修会の報告、終わり)


第9回 「秋の審判いろいろ」

今年の夏は仕事の関係で一日も夏休みを取ることが出来ず、家族には不評でした。おかげで毎年参加しているチームの夏合宿にも帯同出来ず、筆者の「焼きそば」を楽しみにしてくれる子供たちも多いのですが、残念。一昨年くらいから、社会人チームの選手たちも参加してくれるので、なかなか面白い夏合宿なのです。「焼きそば」はともかくも、審判としても子供たちに負けないくらい走り込むことをいつもは心がける、結構、重要な合宿なのです。本年後半、体力切れにならなければよいのですが。

さて、チームが主催する「TSC飯尾杯」は、秋の公式戦が本格化する前の時期にあたる9月に毎年開催します。今年は、「横浜Fマリノス追浜」、「湘南ベルマーレ」のそれぞれジュニア・チーム、それに最近、お付き合いが増えてきた東京の「国立SSS」と神奈川の強豪「玉縄SC」というなかなかの好チームを招待することが出来ました。大会は総当たりのリーグ戦形式で、2日目は、近所の大学の芝のグラウンドを借りることが出来たので、来て頂いたチームの方々にも好評のようでした。大会は、田奈SCも健闘しましたが3位、2位の「マリノス追浜」との接戦を制した「湘南ベルマーレ・ジュニアチーム」の優勝でした。田奈SC出身のヴェルディ・飯尾選手からのプレゼントをたくさんもらって優勝チームの子供たちも嬉しそうでした。ヴェルディ・グッズも多かったせいか、ベルマーレとマリノスのコーチの方々も苦笑い。

筆者、大会主催チームの審判部長として、「マリノス追浜」と「湘南ベルマーレ」の試合の主審を担当しました。両チームとも蹴り合いにならず、ボールをていねいにつなぐサッカーで、スピード感もあるし、主審としても吹きがいのある試合でした。トラップも正確ですし、ミス・キックもなく、反則も少なく、小学生のレベルでは間違いなく全国レベルと言ってもよいでしょう。審判の立場からも、「次はサイドチェンジかな、そのボールをトラップして前を向いたら、あのスペースかな」と予想したところへボールが出るので、走り方としては楽でした。走り方に気を回さなくてもよい分、試合のコントロールに集中出来た感じ。子供たちも、強いチームと試合をすることで、また強くなっていくように、審判も、うまいチーム同士の面白い試合を吹くことで、また上達するのかもしれません。よい経験を積ませて頂きました。

ところがところが、アトで聞いたところによると、「湘南ベルマーレ」に帯同して見学していたチーム関係者の中に、あの全国トップの上川審判がいらっしゃっていたとのことで、筆者、ドッキリ。最初に聞いていたら、ドキドキして審判どころではなかったかもしれません。次の機会でまた見学されることがあるとしたら、もっとうまく吹けるよう、日々、頑張ることにしましょう。

10月は、横浜市少年大会の予選リーグに帯同。各チームの6年生にしてみれば、県大会を含め、最後の公式戦ですから、皆、気合の入るリーグ戦です。9月の試合に比べると、カードを随分、出したような気がします。会場は、廃校予定の大岡高校グラウンド、春の大会で駐車場のことでいろいろ問題があったようで、横浜市少年委員会からも審判員が派遣されていて、幹事チームもピリピリしていたようです。筆者は、結局、6試合の主審を担当。大差の試合もありましたが、春の大会の上位チームで構成される1部のチーム同士なのでそこそこの試合だったようです。でも、その中で、小学生の試合としては、筆者、初めてのケースという出来事がありました。

その一つが、1試合で2枚の警告で退場を命じたこと。「決定的な得点機会の阻止」で一発退場を出したことは何回かありましたが、小学生の40分の短い試合で、警告2枚目での退場は、筆者、初めてでした。その選手に出した1枚目の警告は、開始早々の1分。どんな試合でも、それが小学生の試合であろうとも、この試合はどういう風にコントロールしていくのか、主審として1番最初のファウルは毅然とした態度で取ろうと気にしている矢先のファールでした。ドリブルで突破しようとした攻撃側の選手に対し、守備側の選手が横からスライディングでボールにチャージしました。タイミングとしては微妙でしたが、ボールではなく攻撃側の選手の足に触れて攻撃側選手が転びそうになったファールです。それ程悪質なファールではなかったので、スライディングした守備側の選手には警告せず、攻撃側の直接フリーキックという判定でしたが、守備側の違う選手から、「ボールだろ、それ。」という大きな声が飛びました。筆者の目の前でのファールで、自信をもっての判定だったので、異議を唱えた守備側最終ラインの身体の大きい選手に、即イエローカードでした。警告を受けた選手、えっ、(それだけでイエローですか) という顔をしていましたが、審判試験でカードを出さなかったら、間違いなく、減点の対象でしょう。試合開始最初の5分間のファールを厳しく取れるかどうかが、試験官は特に注意深く見ていますし、そのファールを取れるかどうかで、繰り返しになりますが、その試合をうまくコントロール出来るかどうかに関わってくるからです。

2枚目は、接戦の試合の後半の半ばすぎ。選手同士1対1の局面ではなかったのですが、ドリブルしている攻撃側の選手に対し、「異議を示す」で警告を1枚受けている守備側の最終ラインの選手がスライディング気味に後ろからのチャージで、攻撃側の選手を転ばせてしまいました。強めのホィッスルが吹かれた瞬間に、ファールをしてしまった選手、「あっ」という顔をしていました。故意ではなかったのかもしれませんが、バック・チャージは危険なプレー、「反スポーツ的行為」で先ずは、イエローカードを出して、続いてレッドカード、自チームのベンチの後ろあたりを指さして退場の要請をしました。クレームは出ませんでしたが、本人も1枚警告されているので、気にしながらのプレーだったのでしょう。筆者にしても、小学生の試合では初めての2枚目警告の退場の判定でした。

さて、それよりもビックリしたのが、最終日の最終戦、筆者が主審を担当した試合。決勝トーナメントに抜けることの出来る1位と2位の順位もすでに確定、幹事チームの皆さん、ご苦労さまでしたというリーグ戦最後の試合でした。試合内容は、ちょっと実力差もあってか、大差の試合となりました。最終戦には勝つには勝ちましたが、春の大会では決勝に抜けたのに、秋のこの大会は2位以内に入れなかったこともあり、最終戦の勝ちチームの選手も悔しかったこともあったでしょう。それから、確かに、勝ちチームのFWの選手が相手チームのオフサイド・トラップによくひっかかっていたのは事実です。そんな試合の後半もタイム・アップ、試合終了のホィッスルを吹いて、選手が並んで挨拶。そのあと、お互いに握手をしてる時に、そのFWの選手、副審の一人に向かって、暴言を言ってしまいました。とても文章に出来ないほどの暴言で、副審の方も一瞬何を言われたのかわからず呆然とした顔をしていました。筆者は、主審として、「残っていて下さい。」と言って、取りあえず他の選手の握手の終らせてその場から他の選手を離れさせてから、「今、何を言ったか覚えていますか。」と聞いたところ、そのFWの選手、同じ内容の言葉を悪びれずに繰り返しました。「その言葉は、試合中であれば『侮辱的な発言』にあたり、退場の対象です。すでに試合終了後なので、レッドカードを出すことは出来ませんが、大会の関係機関に報告します。」と説明し、ベンチに戻させました。

例えば、社会人リーグなどでこのような事態が試合後に起こったとしたら、おそらく2試合程度の出場停止が処分として下されるかもしれません。『侮辱的な』、それも審判に対する暴言ですから、重大に捉えられることになります。試合終了後、報告用に渡された試合カードに事情を書き込み、大会本部に暴言の内容を説明、「しかるべき対応を行なうよう関係機関に報告して下さい、また、担当チームのコーチにも事情を説明し、おって処分が下される旨、大会本部から通告すべき」ことをお願いしました。審判に対する暴言は、社会人であろうと、小学生であろうと、許されるべきことではありません、スポーツ以前の問題でしょう。

 


第10回 「W杯アジア予選」

いろいろあった半年間でしたが、また、審判日記を再開します。いろいろあった中でも特筆はやはり、神奈川県の3級審判の更新試験でしょうか。走力試験を受けるために、小田原まで行くとは思いませんでしたし、それ以上に、自称、「筆記試験のプロ」として、筆記試験であんなに苦しまされたのは「想定外」。

ルールブックの28ページ目に記載の「国際評議会の決定事項2」=「ゴールキーパーが手あるいは腕のいずれかの部分でボールに触れたことでボールをコントロールしたとみなす。ボールを自分のものとするということには、ゴールキーパーが意図的に手でボールの方向を変えることも含まれるが、セービングをしたときのように自分のものとする意図をもたずにボールがゴールキーパーからはね返ったと主審が判断した場合はこれに含まれない。」というような文章を暗記していないと回答出来ないような設問は、「大問題」ではないでしょうか。内容は、当たり前と言えば当たり前ですが、国語のテストのように、途中に穴を開けられてそれを埋めるような問題はお手上げ。悔しいから全部暗記しました。

とか言っているうちに6月8日、バンコクでの北朝鮮戦に勝って、日本は2006年ドイツW杯の出場権を獲得したのですが、ここまでの5試合を通して、審判の立場で試合を見てみると、結構、楽しめました。平壌での「北朝鮮」対「イラン」戦、主審の判定に激怒した北朝鮮の選手たちでしたが、国際試合の経験に慣れていない点はあったかもしれません。広島サンフレッチェから代表入りした日本生まれの北朝鮮の選手が「冷静になれ」と一生懸命、仲間を抑えているのが印象的でした。その、イランのペナルティ・エリア内で北朝鮮の選手が倒されたように見えたプレー。スポーツ・ニュースであの場面だけ見ると、北朝鮮にPK、といったプレーでもあったように思えました。審判の判定は一定でなければならないのですが、おそらく、あの場面に至るまでの試合中にいろんなことがあったのだと思います。

例えば、バンコクでの北朝鮮戦の5日前に行われた日本がアウェーでのバーレーン戦。中田英からの縦パスを中村俊介がヒールで落とし、そのボールを、中村俊介と柳沢がオトリで走りこんで出来たスペースをうまく利用して、小笠原が冷静に蹴りこんで決めたゴールは、本当に素晴らしいゴールでした。この1点を守り切っての日本の勝利だったわけですが、筆者が興味を持って見たのは、試合開始早々にバーレーンのペナルティ・エリア左サイドに走りこんだ三都主がトリッピングされたと装って倒れこんで取られたシミュレーションの警告。このパーレーン戦の主審は、昨年日本が優勝したアジア杯の準々決勝のヨルダン戦でPK戦にもつれこんで、ものすごく苦労した時の主審。中村俊介と三都主が2本外して絶対絶命になってから、ゴールを変更したあの主審です。

で、バーレーン戦の三都主、アジア・レベルの審判をちょっとバカにしたようなところがあったのかもしれませんが、倒れかたがへたでした。三都主、これで累積警告で次の北朝鮮戦に出られなくなってしまいましたが、このプレーが試合の後半にも影響を及ぼしました。虎の子の1点を守ろうとするばかりでなく、後半に果敢に攻め上げる日本。特に、そういう時の中田英というのはたいしたもんで、ドリブルでバーレーンの左サイドをかけ上がって、ペナルティ・エリア内に入り込みシュート態勢。思わず、バーレーンの守備の選手が、後ろからのチャージで中田英を倒してしまいました。筆者の判定なら完全に警告で日本のPKだったはずですが、主審、反則を取らずにそのまま流してしまいました。試合開始早々の三都主のシミュレーションのプレーがこの主審の眼に焼きついていたはずで、それで中田英への反則を取れなかった、と筆者の眼には映りました。

バーレーン戦は、小笠原の1点を死守して日本が逃げ切ったわけですが、もし、バーレーンに1点でも入れられていたら、流れは変わっていたはず。その意味からも、中田英が得たはずのまぼろしのPKによる2点目は大きな2点目であったのです。

もっとも、W杯アジア最終予選リーグの4月の初戦、ホームでの北朝鮮戦の開始早々のFKで小笠原が先取点を入れた場面、やはり三都主がトリッピングで倒れたという判定で得たFKだったのですが、後ろにいた相手選手、5メートルくらい離れていたので、あのプレーも三都主のシミュレーションが本当のところ。この初戦、北朝鮮に同点に追いつかれて、ロス・タイムに大黒が決勝点を入れての辛勝だったので、あの主審の判定で、日本のW杯出場が決まったとも言えるのです。ドイツW杯の本戦では、あの三都主の転び方は通用しないでしょう。

今年は、また、いろいろ書いてみることにします。今月末は、FIFAのルール改正について神奈川県上級審判員向けの講義を受ける予定です。


第11回 「神奈川県社会人2部の試合で」

ちょっと前のお話になりますが、1月に神奈川県社会人2部の入れ替え戦の副審に行って来ました。場所は、いつもの藤沢体育センターのクレーのグラウンド。2級を目指したいというT海大学の3級審判が主審で、インスペクターがチェック。1stは2級審判員、2ndの旗を筆者がふりました。主審の3級審判員、インスペクターからの問いかけで、「もっと上級審判員を目指したいです。」と答えていたので、筆者もそれならアシストしてあげようかという気持ちに。それにしては、試合前の打ち合わせはもう少し時間をかけてしっかり行なっておきたかったのですが。

特に、社会人の2部クラスになると、プレーしているほうも、もっと上を目指したいと思っているプレーヤーも多いので、いい試合にしてあげたいところです。打ち合わせは2級も3級も関係なく、主審の主導でどういう旗を振ってもらいたいのか、どういうタイミングであげてもらいたいのか、もっと言えば、どういう内容で試合をコントロールしたいのか、主審としてのオーラを発揮して欲しいところです。選手と一緒にピッチに入るときも、胸を張って堂々と。挨拶が終わって選手がピッチに散って、お願いします、という気持ちをこめて主審から副審に握手を求めることも、場合によっては必要でしょう。

試合のほうは、前半こそ1対0の接戦でしたが、後半に3点差になって、リードされたチームが少々バテ気味で勝負あったという感じでした。T海大学の3級審判員ですが、主審としては、まあまあといったところかもしれません。若いので当然としてもよく走れているし、反則の判定も一定、副審とのアイコンタクトも、それなりに取ってくれたというところです。が、3級レベルでは、そんな感じでよいかもしれませんが、それ以上を目指すのであれば、物足りなさも。もう少し反則の判定のレベルを上げることも必要かもしれません。後半、徐々に荒れたプレーが出てきたときに、毅然とした態度が必要だったかもしれません。

試合後のインスペクターを交えた反省会でも、2ndの筆者が後半にあげたオフサイドの判定で、攻め側のゴールキーパーが遠くの方から「ないだろ?」と大きな声が出た際の主審の対応について説明を求められていました。確かに彼が入れられた前半の得点は、オフサイド・ラインぎりぎりから飛び出したフォワードの選手がこのキーパーと1対1になって決めたゴールで、このキーパー、どうも筆者のオフサイドの判定に文句がある様子。ハーフタイムの主審との打ち合わせでも、前半の得点は、オフサイドではなかったということでお互いに確認しあっていたばかりでした。筆者としても、後半のこのオフサイドもぎりぎりアウトで、自信をもってあげた旗なので、このキーパーの声に対しては、ムッとした気持ちでした。

インスペクターの指摘も、「副審が自信をもってあげたオフサイドの旗に対する、あの大きな声のクレームは、例え遠くの位置にいるゴールキーパーでも警告の対象とすべし。」でした。特に、手を大きく広げての声なので、回りの観衆にもよく見えている行為。主審を一生懸命アシストしている副審の判定に対する異議でもあるので、主審は毅然と対応すべしとのこと。参考になります。

それから、もう一つ興味をひいたインスペクターからの指摘事項が、前半に主審がとったプレーオンの判定。ハーフウェイラインから自陣にちょっと戻ったくらいのところから、相手ボールを奪ってカウンター攻撃に移ろうとしたプレーヤーに対し、ボールを奪われた相手チームのプレーヤーがユニフォームを引っ張って阻止しようとしたプレーに対し、それを振り切ったところで、主審のプレーオンの声とジェスチャーでしたが、インスペクターから一言。「このレベルの(低い)チームの試合であの位置でプレーオンかけても、得点までいくかどうか疑わしいもの。プレーオンよりも、即、ホィッスルでフリーキックにした方が得点のチャンスは大きい。特に、ユニフォームを引っ張った選手に対して警告も出せるし。」と。

確かに、プレーオンがかけられたあとに、ユニフォームを引っ張られたプレーヤーがそれを振り切ってドリブルでボールを相手陣内に持ち込んだのはいいのですが、まだ2人も3人もバックスが残っていて、加えて押し上げてくる味方プレーヤーもなく、ディフェンス・ラインを突破出来ず、孤立したままあえなくボールを奪われてしまったのが、このプレーオンの結末でした。さりとて30メーター近くもドリブルしているわけで、そこでボールを奪われたからといって、もとに戻ってフリーキックを与えるわけにもいかないでしょう。「プレーオンをかけるのはいいが、そのチームのレベルを考えながら判定することが大事。それがアドバンテージ。」との説明でした。2部の試合で、レベルが低いと言われるのもかわいそうですが、結果として反則したほうの得となってしまったのも事実。

なるほど、なるほど、と結構、ためになった一日でした。でも、この日、参加を予定していた3級の走力試験を受けられず、あとあと苦労することになったのですが。


第12回 「ルール改正・オフサイド」

今年、2005年度のFIFAのルール改正の目玉はなんと言っても、オフサイドのルール変更。神奈川県の上級審判員講習会でもいろんな質問が出たり、日本審判協会からの通達が新たに出されたりで、草の根レベルではかなりの混乱が予想されます。筆者なりにちょっと整理してみました。

先ずはオフサイドのおさらいです。ルールブックには、

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第11条 オフサイド

反則:    

ボールが味方競技者によって触れられるかプレーされた瞬間にオフサイドポジションにいる競技者は、次のいずれかによって積極的にプレーにかかわっていると主審が判断した場合にのみ罰せられる。

1)プレーに干渉する、または

2)相手競技者に干渉する、または

3)その位置にいることによって利益を得る

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とだけ記載されていて、本当はあまり複雑に考えなくてもいいのかもしれません (ちなみにこの文章、4級の試験には必ず出る箇所です)。それに今年の改正で次の「決定」が追記されました。

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国際評議会の決定事項

決定 1    

オフサイドポジションの定義におけるメ相手競技者より相手ゴールラインに近いモとは、頭、体または足のどこの部分であってもボールおよび後方から2人目の相手競技者より相手ゴールラインに近いことを意味する。手はこの定義に含まれない。

決定 2

積極的にプレーにかかわるという部分の定義は、次のとおりである :

1)プレーに干渉するとは、味方競技者がパスした、または味方競技者が触れたボールをプレーする、あるいはこれに触れることを意味する。

2)相手競技者に干渉するとは、明らかに相手競技者の視線を遮る、または相手競技者の動きを妨げる、またしぐさや動きで相手競技者を惑わす、あるいは取り乱させると主審が判断し、それによって相手競技者がボールをプレーする、またはプレーする可能性を妨げることを意味する。

3)その位置にいることによって利益を得るとは、既にオフサイドポジションにいて、ゴールポストやクロスバーから跳ね返ってきたボールをプレーする、または既にオフサイドポジションにいて、相手競技者から跳ね返ってきたボールをプレーすることを意味する。

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サッカーは足、頭、体でボールをプレーする競技で、ハンドとなる手や腕がオフサイドラインよりゴールに近いところにあっても、利益を得ることにはならない、というのが「決定1」の内容。まあ、身体のどの部分がオフサイドかという質問に対して、より厳密な定義が明示されたことになります。

「決定2」は、つまりは、オフサイドポジションにいてボールに反応しても、あるいは追いかけてもオフサイドの適用はまだしない、その選手がボールに触れることにより、初めてオフサイドが適用されるという説明でした。また、オフサイドポジションの選手がボールを追いかけると同時に副審もボールを追いかける、そして例えば20メートル走ってボールに触れて始めて副審の旗が上がってオフサイドが適用されるわけですが、プレーの再開としては、ボールに触れた箇所ではなく、違反の起きた地点、つまり味方競技者からボールが出された瞬間にオフサイドポジションにいた攻撃側の選手の位置に20メートル戻って、守備側の間接フリーキックで開始されるとのことです。

「日本協会の解説」にもあるとおり、競技規則の改正ではなく、競技規則の尊重とサッカー競技の最終目標である得点を目指す攻撃的なプレーを保護することが、今回の「決定2」の追記の大きな目的であるとのことです。つまり、オフサイドポジションの選手が反応したり追いかけたりするだけではオフサイドの適用はしない、守備側の選手のクリアーミスもあれば、攻撃側チームのオフサイドポジションにいなかった選手が一生懸命フォローすることもある、そういう可能性を広げることで得点の機会がより一層大きくなる、ことを目指しているという考え方です。

講師の方からは、このルール改正により現場の試合では実際どんなことが起こっているのかという説明がありました。ボールが攻撃側から守備側のうらに出たとき、明らかにオフサイドポジションにいる攻撃側の選手がボールを追いかける、明らかなオフサイドなので守備側の選手はオフサイドの選手を追いかけない、すると、攻撃側の2列目からオフサイドではない選手がオフサイドの選手のあとを追いかける、オフサイドの選手はフォローしてくれる味方の選手を確認してボールに追いついてもボールには触らない、フォローしてきた2列目の選手がボールに追いつき、ゴールキーパーと1対1、もしくは、オフサイドの選手がオフサイドを解除されるので、2対1でゴールキーパーと対峙することになる。明らかに、大きな得点のチャンスになるとのことです。

それでもこのルール改正をよく知らない選手からは文句がたくさん出るそうです。オフサイドポジションの攻撃側の選手が一生懸命ボールを追いかけてもボールに触れた瞬間にオフサイドのホィッスルで無駄走りになってしまう。特に、オフサイドかどうかぎりぎりのタイミングで飛び出したFWの選手の場合、ホィッスルが鳴らないのでオフサイドではないと自信をもって走っている場合はなおさら頭にくるのかもしれません。守備側の選手にしても、オフサイドの選手を追いかけてもボールに触れた瞬間にオフサイドになるならその守りのための緊張感が無駄になってしまうということになります。

筆者が手をあげて質問したのはまさにこのケース。守備側の選手にしてみれば、ボールを追いかけている攻撃側の選手がオフサイドかどうかわからないわけで、守備のために一生懸命追いかけて、場合によってはボールを奪うために相手にタックルするかもしれない、そのタックルが反則、あるいは警告の対象になったりするかもしれない。そのタックルを受けた攻撃側の選手がボールに触れればオフサイドが適用されるわけで、その場合は誰が反則になるのか。オフサイドの選手がボールを追いかけさえしなければ、守備側の選手はタックルする必要もないし、反則を犯すこともなかったはずですから。

この日の講習会には、日本協会からも担当の方が来ていて、筆者のこの質問に対しては、「オフサイドが適用される前の反則なので、もちろん、タックルをした守備側の選手の反則、それが、後ろからのファールであった場合、退場の対象にもなる。」と、明確な回答でした。筆者としては、ちょっと納得のいかない回答でしたが。

もう一つの疑問は、ボールの落ちどころがオフサイドで追いかけてくる攻撃側の選手とゴールキーパーの中間くらいの場合、その場合も攻撃側のオフサイド適用前の選手がボールに触れるまで判定を出してはいけないのかどうか。まあ、その場合は、明らかにオフサイド適用前の選手が「相手競技者に干渉する」ことになるのですから、ボールに触れる前でも旗があがると思うのですが。でも、ぎりぎりのプレーの場合、キーパーがクリアーした瞬間に攻撃側の選手がアフターでチャージして (故意であろうがなかろうが) キーパーの怪我につながることもあるわけで、やはり早めにオフサイドの判定をするべきと思います。旧ルールにおいても、オフサイドの判定が一瞬遅れたためにキーパーが怪我を負わされるというケースは多いのですから。

3つ目の筆者の疑問点は、そういう早めの判定を主審にゆだねるためにも、オフサイドポジションからボールを追いかけた選手がいる場合、その瞬間に副審から主審に対しサインを送ることは出来るのかどうか。どうもラグビーの経験があるからではないのですが、筆者はラグビーにおけるアドバンテージのサインが好きです。周りで見ている人たちにも、あとで戻って反則を取った場合でも納得性が高いし。で、それに対する日本協会の担当者の回答は、「そういう打ち合わせは試合前に主審と副審で行なって頂くことは可能。但し、主審と副審の間のそういったサインがプレーヤーのわかるところとなるのはいかがなものか。」と、こちらの回答はだいぶわかりにくいものでした。

筆者としては、逆にそのアドバンテージのサインがプレーヤーにわかった方がよいはずと思っての質問なのです。その方が、オフサイドの選手もそれを追いかける守備側の選手も無駄な走りをする必要もないし、一方では、オフサイドの選手がボールを追いかけて、それをオフサイドとわかった上で2列目の味方選手がフォローするということもあるわけで、得点の機会が広がるという目的は担保されると思うのですが。

オフサイドに関する質問は他にもたくさん出ましたが、まあ、神奈川県の3級審判員としては、このルール改正によって、Jリーグの試合でどのような判定が行われるのか先ずは見守りたい、というのがこの日の結論でした。いろんな判定が出てきて、それがいろいろな角度から解釈され、その上での指導や通達があるのでしょう。でも、確実に言えることは、副審に高い判断能力が求められるということ、試合前の打ち合わせと主審と副審の連携がより重要になるということ、そして守備側バックスの選手は大変、とにかくボールを追いかけること、ホイッスルが鳴るまでプレーを絶対にやめてはならないことだけは、はっきりしているようです。


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*ここで記載している内容や判断などは全て書き手の主観であり正しいものでない場合があります。

 

日本サッカー審判協会